HACCP
教育資料 


1. HACCPとは

2. HACCPのメリット
   ● 食品の安全性が向上
   ● だれが見てもわかるシステム
   ● 安全性のレベルが維持される
   ● 製造方法の多様化・弾力化が可能に
   ● 文書化

3. HACCPの7原則

   1. 危害分析
   2. 重要管理点の特定
   3. 管理基準の設定
   4. モニタリング方法の設定
   5. 改善措置
   6. 検証
   7. 記録の維持・管理

4.HACCPシステムの前提条件





1. HACCP とは

HACCPは米国生まれで国際的に広く認められている食品安全性を確保するための方法です。 食品の製造・生産プロセスにおいて、食品の安全性に重大な危害を与える原因を着実にコントロールしていく手法です。 勘と経験で食品を製造(流通・生産を含む)し、最終製品を検査して危なそうなら捨てるといったやり方ではありません。
HACCPはHA(危害分析)とCCP(重要管理点)の略です。 危害分析において、対象となる食品の製造・流通プロセスについて、工程ごとに食品の安全性に害を与える微生物、化学物質、異物は何があるのか、それに対してどの工程でどのような対処をするのかを解析します。 その結果、危害の発生防止のうえで極めて重要な管理点(CCP)について、管理が適正に行われているときに守られているべき基準を定めます。 さらに、それをどのように監視(モニタリング)するのか、基準をはずれたときは、どのような対策をとればいいかといったことを分析し、対処法を決めます。 工程上の作業は標準作業手順書として文書化し、だれが作業する場合でも間違わないようにします。 また、モニタリングの結果などはきちんと記録し、HACCPプラン通りに実行している証拠にします。


2. HACCPのメリット

 ・食品安全性が向上

HACCPを実施することによって、その食品の安全性が増します。 これがメリットの第一点です。 HACCPというのはそれ自体は単なる枠組みであり中身は事業者自信が決めるものです。 ですから安全レベルも事業者自信が決めます。 ただし、その決めた安全レベルを確実に実行に移せるような、仕組みになっています。 HACCPシステムを作ると、自社の食品はどういう風にして安全を確保しているのか、食品製造側にも明確に見えるようになります。 危害分析を行うことによって、従来のプロセスを一から見直し、対策を施すべきところも明確になります。 従って、まじめにやれば、今までの製品に比べて安全性が作りこまれます。
最終検査で安全性の確保というのは、ある程度行われていると思います。 しかし、非常に低い確率で存在する危害原因物質を検出するには多くの検体数が必要になります。 製品の全部を検査できないので、たまたま検査した製品からは不検出であっても、同じロットの全てが安全かどうかは統計的にそうだろうと予測しているにすぎません。 検査法によっては、微量の危害原因物質を検出できない事もあり得ます。 また、最終的に「はねる」というのは効率の悪いことですから、もっと事前に安全に作っていけば最後にはねる数もずっと少なくて済むでしょうし、負担も楽になるわけです。 できるだけ危害の発生を防止できる工程で安全性を確保していこうという考え方です。 HACCPは途中でコントロールすべき工程での安全性を効率良く確保できるシステムなのです。

 ・誰が見てもわかるシステム

HACCPは誰が見ても、どう安全を確保しているのか、どうプロセス上で安全を確保しているのかが分かります。 なぜそこでそういう安全確保の方法をとっているのか、製造側の意図とその実行方法がすべて分かるということです。 しかも、文書等で書いてある事が確実に行われている、少なくともHACCPシステムがきちんと周っていれば確実に行われているということが分かるのです。 ですから安全性について信用できるという事になるわけです。

 ・安全性のレベルが維持される

最初は素晴らしい仕組みを作っていっても、徐々に崩れていくというのはよくある話ですが、このシステムでは、定期的にプラン通り実行しているか、HACCPプランの各要素は科学的に適切かといったことを見通しますから、崩れて行きません。 逆に、現状のやり方だと新しい情勢に合わないという時には、きちんとHACCPシステムとして直していきます。 勿論ルールも文書も直していきます。 こうすることによって、気がついた人だけは正しい事をして、気がつかない人は実行しないということは起こらなくなるわけです。 
安全の確保というのは、やっている中での最高条件の時にではなく、最悪条件でも安全を確保できるというところに焦点を当てなくてはなりません。 つまり、普段はこうやっているけれども時にはこんな事もする、あるいはこの時期は緊急処置だから、あるいは今は忙しいからこれはできないというなら、HACCPシステムとして、それはできないということになります。 
危害分析の結果、ここはどうしてもこうしなければならないというプランを決めれば、忙しい時でもそれは実行しないといけません。 例外措置が出てくるなら、例外措置もきちんと定めておきます。 そうすることによって、一番危ない時の「抜け」を無くすわけです。 普段は安全性を確保できているが、いざという時、一番危ない時に安全を確保できないようではいけません。
HACCPプランを作る時には、あまり格好良いものを作ろうと思ってはいけません。 今行われているレベルに合わせてHACCPプランを作るべきです。 ただし、それがHACCPプランの原則から外れているものであれば、そこは修正すべきです。 まず現状レベルのHACCPプランを作る。 それが今のあなたの事業所の実力です。 その上で段々改善・改良を重ねていくのがいいでしょう。 あまりに一度に大量の事をやろうとすると破綻をきたします。

 ・製造方法の多様化、弾力化が可能に

これまでは、例えば最終検査のみに頼るものであったり、何℃で何分加熱という基準を、どんなレベルの製造者であっても安全性が確保できるように、一律に決めていたりしましたが、食品製造業者の中の自主管理できる人には、そのような一律性の規制は必要なくなってくるわけです。 そうすると食品製造者が多様な製造方法をとる事が可能です。

 ・文書化

HACCPはシステム規格であり、文書化というのがキーポイントになります。 文書化というのはどういう事かというと、決めたことや実行の記録などを誰が見ても分かるように、そして伝えられるようにしておくということです。 なぜ文書化を強調するかというと、文書が大切なわけではなく、文書にすることによって、情報を誰にでも分かる形で残しておくということが大事なわけです。
文書化とは、単に文書を作れば良いということではなく、文書を作って管理・保存、あるいは記録を作って管理・保存、そしてそれをまた使う。 そしてどんどん改訂もされていくという一連の行動を指しているわけです。
日本企業は、文書にして残さなければいけないとなると、何でもかんでも文書にします。 どんどん作っていって管理しきれないほど作って、身動きできなくなる。 あるいは自分のできないことまで文書にしてしまう。 そんな事が起こってしまいます。 文書は単に倉庫に入れておくだけではなくて、必要に応じて使い、また、改訂していかなければいけません。 文書は必要最小限の方が良いわけです。 その代わり、文書と実際が合っていなければなりません。 
従って、格好よいこととか、あっても無くても良いような事はプランやルールにしない。 どんな時でも実現可能なことをルールにするのが基本なのです。 記録にしても、本当に必要な部分の記録をとる。 そのために危害分析を行っているわけです。 その代わりそこでは徹底的に管理する。 信頼性の高い管理をするということが必要になるわけです。 そうする事によって、効率的な食品衛生システムができるわけです。
HACCPシステムは求められる安全性に対して、きわめて効率的なシステムであるのが本当の姿です。 ところが、良く検討しないままに作ってしまうと、非効率的なシステムができる危険性が高いのです。 余計な仕事が増え、今までやっていなかった文書の管理もしなければいけません。 現実にやれないような事を定めてあると、仕方がないので二重帳簿をつけてしまったりと、日常業務は正常に働かなくなるわけです。 これを防ぐためには、最初に本当に練って、必要最小限をきちんとすることが大事です。


3. HACCPの7原則

 1. 危害分析
 2. 重要管理点の特定
 3. 管理基準の設定
 4. モニタリング方法の設定
 5. 改善措置
 6. 検証
 7. 記録の維持・管理

 HACCPの原則を集約していけば、この(上記の)7つの構成要素になります。 7原則は絶対に守らなければいけないものです。


7原則の1 危害分析

危害分析とは

危害分析というのは、HACCPプランの中で、発生する恐れの有る危害について、危害の原因となる物質は何か、発生する要因は何かを明らかにした上で、それに対する防止措置を明らかにすること。 原材料及び工程ごとに、危害の原因物質、発生要因、防止措置を明らかにした危害リストを作成することです。

危害原因物質の種類

危害の原因となる物質は三つに大別できます。
一つは生物学的な危害原因物質。 例えばE.coli, O-157:H7のような病原微生物,あるいは寄生虫なども生物学的な危害原因物質です.例えば鯖などにつくアニサキスのような寄生虫は、生きたまま摂取することによって胃の中に穿孔して出血するとか、痛みを覚えます。 つまり、もともと天然に存在する小さな生物で、人間が摂取してから体内で毒素を生産するだとか、感染に伴って人間の生体機能に悪影響を及ぼすとか、あるいは感染に伴って、腸管壁を損傷するようなものです。
二つ目は化学的な危害分析原因物質。 化学的な危害原因物質というのは、簡単にいいますと食品中に含まれている化学物質の作用によって人間が健康危害を受けるとか、そういう種類のものです。
まず、キノコとかトリカブトの毒だとか、そういう植物毒は化学的な危害原因物質に含まれます。 動物性の毒でいえば、貝毒だとかシガトラ毒などもその例です。 
次に植物毒、動物毒とは異なり、人為的に使う化学物質です。 例えば、工場内で殺虫剤を使用し、それが混入するだとか、潤滑油が機械の中から入ってしまうだとか、洗剤とか殺菌剤、機械を洗った洗剤が残っていて、それが混入してしまったというような場合です。

  危害
● 危害とは何か: 飲食に起因する健康被害又はそのおそれ
● 危害の原因物質: 食品中に存在することによりヒトに健康被害を起こすおそれのある因子で、次の3つに分類される。

 (1) 生物学的危害    食品中に含まれる病原細菌,ウイルス、寄生虫の感染又はそれらの体内で産生する毒素による健康被害。
 (2) 化学的危害    食品中に含まれる化学物質による疾病、麻痺又は慢性毒性の健康被害。
 (3) 物理的危害    食品中に含まれる異物の物理的な作用による健康被害


 アフラトキシン(とうもろこし、香辛料、ナツメグなどにある種のカビがついて、そのカビに適した条件になると作り出す毒素)などのカビ毒も通常、化学的な危害原因物質に分類されています。 また、PCB、水銀などの環境汚染物質も化学的危害原因物質に分類されます。
 最後は物理的な危害原因物質、いわゆる異物です。 物理的な作用によって、飲食により人間が危害を被るというものです。 例えば金属片やガラス片や木片などが食品に混入し、それを食べる事によって歯が折れるだとか、口腔内に傷がつくとかいったようなことが物理的な危害になります。
HACCPではこれらの3種類の危害要因物質をいっぺんにコントロールする事になっています。


7原則の2  重要管理点の特定

各工程においていろいろな危害防止措置(コントロール・メジャー)があるけれども、その防止措置の中で重要管理点(CCP)に該当するものはどれかと言う事を特定します。

● CCPの具体例

〔危害の発生を予知するCCPの例〕

‐病原菌により汚染された原材料や抗菌性物質の残留といった危害は、原 材料収受時のコントロールで予防できる。
 (例: 供給者から提出される試験成績書の確認)
‐化学的危害(添加物の過量使用)は、添加物の計量又は添加段階のコン トロールで予防できる。
‐病原菌の増殖は、冷却又は冷蔵保管工程での温度管理によってコントロ ールできる。
〔危害の原因物質を排除するCCPの例〕
‐病原菌は、加熱工程で死滅させることができる。
‐金属片は、金属検出器によって検出し、金属片が混入している製品を製 造ラインから排除させる事ができる。
‐寄生虫は適切な温度と期間の冷凍で死滅させることができる。 (例: 非加熱食肉製品中のトリヒナ)
〔危害を許容範囲まで低滅させるCCPの例〕
‐金属以外の異物は、原材料の整形段階での従事者による目視確認で許容 範囲まで低下させる事ができる。


危害の原因物質の一つがあり、それをどうしても防がなければならないとします。 そのとき、どの工程が一番その危害の発生を防ぐ為に重要かということを考えればいいわけです。
一番効く工程で十分に危害の発生を防げるのであれば、それでいいだろうし、それだけでは不十分、もう一つ別の工程でも管理しないとだめだというのであればもう一つ、第二の関門を用意すればいい、というふうに考えます。
牛乳工程における殺菌というのは、牛乳中に存在する病原微生物を死滅させる目的のために特別に入っている工程です。 これはまさしくCCPになります。つまり、もともとその原材料に含まれる可能性のある病原微生物などを死滅させたり除去する工程は、これまでやってきた食品製造工程の中に入っているはずです。 それは明らかにCCPです。


7原則の3  管理基準の設定

管理基準とは

 CCPにおいては、適切な管理が行われているのか、そうではないのか、見極めなければなりません。 その為に、この間では管理が適切だとみなす、そこから外れた場合には、管理が不十分だとみなすという境界を決めます。 それが管理基準(CL:クリティカル・リミット)の設定です。
各CCPごとに管理基準を決めます。 CCPでの管理基準は一つとは限りません。加熱殺菌の工程では温度と時間というように、場合によっては二つ以上あります。 例えばハンバーガーのパティを焼く場合には,加熱温度と時間を決めても大きさが違えばパティ内部の温度は変わりますから、加熱温度と時間とパティの厚さとか重さとかいくつもの管理基準が必要になります。

基準値設定の根拠

管理基準というのは、最悪の場合を想定して、それでも十分に危害因子を除去できるような方法を科学的データに基づいて考えるというのが基本です。


7原則の4  モニタリング方法の設定

一つ一つのCCPについて管理基準を設定したら、次は各工程の管理状態が適切かどうかを監視、モニタリングをします。 従って、監視方法を決めなければなりません。
実際には、管理基準を決めると、おのずとそれに適した方法が決まってきます。 例えば、流体の温度と時間をモニタリングということになれば、流れている処に温度計の端子を入れて測ればいいでしょう。 あるいは固体の食材を一つの釜に入れて加熱する場合であれば、その釜の中で一番温度が上がりにくいところにある食材を、加熱後に取り出して温度を測ったり、実際に加熱している間、温度計の端子を入れておいて、その温度をずっとモニターする方法もあるでしょう。
管理基準を決めたときに、その目的に応じてある程度、モニター方法が決まってくるのです。 モニタリングには要件があります。 「抜けのない監視」です。 始まってから最終製品ができるまで、そのロットの中で最初の一本目から最後の一万本目まで、すべてにおいて管理が十分に行われていたということが確認できるような方法にしなければいけません。
そのため、自記温度計のように自分で測って自分でグラフを描いてくれるものが最も良いわけです。 一時間に一回のモニタリングでは、その間にどうなっているかわからないということもあり得ます。 ですから、基本的には温度の測定を連続的にモニターできれば理想的です。
連続記録ができない場合には、その工程における温度のばらつきを勘案して、そんなにばらつかないのであれば、それなりの時間をおいて測定してもいいでしょう。 ところが、時刻によって大きなばらつきがあるとなれば、かなり頻繁に測定していかないと、管理基準を超えたかどうか判断できなくなります。


  モニタリングシステム

〔構築にあたって留意すべきこと〕

● WHAT:CCPがCLの範囲内で管理されている事を確認するために行う観察、測定又は試験検査
● HOW:迅速で正確な物理的、化学的または官能的な測定、検査
● WHEN:連続的又は相当の頻度
●WHO: 特定のモニタリング方法について教育訓練を受けた従事者が担当

〔モニタリング結果の記録様式〕

● 記録様式の名称
● 営業者の氏名又は法人の名称
● 記録した日時
● 製品を特定できる名称、記号(ロット名)
● 実際の測定、観察、検査結果
● CL
● 測定、観察、検査者のサイン又はイニシャル
● 記録の点検者のサイン又はイニシャル


7原則の5  改善措置

管理基準を決めてモニターしている際、管理基準を超えてしまった場合、どうしたらいいのでしょうか。 その対処法を改善措置(是正処置)と呼びます。 管理基準を超えるのは、その工程(CCP)の管理状態が適切でないということになります。 その場合には、二つの行動が必要です。
なぜ管理状態が不適切になったのか原因を調べ、そこの管理状態を適切な状態へ戻すということが一つ。 もう一つは、管理基準を超えた工程で処理された製品・半製品をどうするか決めなければなりません。 廃棄するのか、もう一度同じ作業を繰返すのか、あるいはほかの製品に転用するのかといったことです。
そういう工程をもとに戻すというのと、もう一つは管理基準を逸脱していた間に製造された製品に対してどういう処分を下すのかと、この二つをあらかじめ決めておきます。逸脱が起きてから決めるのではなくて、あらかじめ、この場合には誰がどうするかということを文書で規定します。 逸脱してから対応を検討すると時間がかかります。 その間に食材が流れて行くと、それだけ後の改善措置が大変になります。 また管理基準から逸脱したことにより、その工程の従事者はパニックにおちいることもありえます。 そのようにたかぶった精神状態で最適な対応策を瞬時に考えつくというのは至難の業です。 
管理基準を逸脱するといった事態は往々にして、ベテランが休んでいるときやいつもの管理者がいないときに起こります。 それからあわてるのでは遅いのです。 だれがどういう対応をとるかということを文書で決めておき、それぞれの担当者がやるべきことは文書にするだけでなく、教育・訓練しておく事も大切です。
連続モニターをしていて、もし殺菌工程で管理基準から外れた場合にはすぐにラインを止め、その製品を一つ前の段階に戻してもう一度殺菌工程を通します。 それでは商品にならない種類の食材であれば廃棄します。 そうすれば安全性の上で問題がある食品がそのまま出てしまうことは起こり得ません。 それが改善措置です。

 改善措置

● 改善措置の構成要素

(1) 逸脱原因を修正又は排除し、工程の管理状態を元に戻す。(2) 工程の管理状態が不適切であった間に製造された製品を特定し、その処分方法を決定する。

● 記録するべき改善措置の実施結果

(1) 措置対象となった製品の名称、ロット番号、数量等
(2) 逸脱の内容、発生した製造工程又は場所、発生日時
(3) 逸脱の原因を調査した結果
(4) 製造工程を回復させるために実施した措置の内容
(5) 逸脱している間に製造された製品等の処分 (安全性確認のために製品等の検査を実施した場合は、その結果を含む)
(6) 以上の事項の実施及び記録の担当者並びに点検者のサイン
(7) HACCPプランの見直し又は改定作業が必要か否かの評価。


7原則の6   検証

検証は、作成したHACCPプランが、当初のHACCPチームで考えた通りに、工場の衛生管理の機能を果たしているか、衛生管理をする上で正しい機能を果たしているかということを確認する行為です。 これを分類しますと
1. HACCPプランを実施している中で、本当にそのプランのとおりにやっているかという事を確認。 つまり,文書上の計画、指示、責任と権限などが実際の行為と合っているかどうかを確かめます。
2. 当初、HACCPプランを作ったときに、CCPの設定が妥当であるかとか、あるいは管理基準の数値が適切であるかということは、ある程度科学的な根拠に基づいて作ったはずです。 けれども、それが本当に半年なり一年たったときに正しいかということを再評価します。


7原則の7  レコード・キーピング(記録の維持・管理)

これは、どこのモニタリングの結果はだれが書いて、だれが適切に書かれたことを点検した上で、どこに保管するのか、保管場所と責任者を明確にする事です。 内部監査もそうですし、あるいは保健所などが外部監査に行ったときに、ここのCCPのこの一ヶ月間の記録を見せてくださいといったときに、「はい、これです」とすぐに出せるような状態を求めているわけです。

 記録及び保存文書の内容

●HACCPプランの実施に関する記録としては次のようなものが挙げられる。

(1) モニタリングの結果
(2) 改善措置の実施結果
(3) 一般的衛生管理プログラムの実施結果
(4) 検証の実施結果

●HACCPに関する文書として、以下のようなものが挙げられる。

(1)    HACCPチームの構成と役割分担
(2)    原材料などの記述
(3)    製品の記述
(4)    製造工程一覧図(フローダイアグラム)
(5)    標準作業手順書
(6)    施設内見取り図
(7)    危害分析に使用した各種資料
(8)    危害リスト及びリスト作成時の議論の経過
(9)    一般的衛生管理プログラム
(10) CCP及びCL決定時の議論の経過及び根拠となった資料
(11) CCPにおける措置の効果に関する資料
(12) 原材料又は工程別に、危害、その発生の要因及び防止措置、CCPの明示,CCPにおける管理基準、モニタリング方法、改善措置及び検証の方法の要旨並びにCCP及び一般的衛生管理プログラムの記録文書名を記載したHACCPプラン総括表。
(13) CCPごとにその措置の具体的な内容を記載したCCP整理表。
(14) 製品等の試験成績
(15) 文書保存規定

文書量がいたずらに増えると管理も大変になります。 従って、どのレベルの文書まで残したらいいかが問題です。 HACCPシステムに関していえば、製品の安全・衛生に影響することがらに関する文書を管理するのが原則です。
例えば少なくとも、CCPのモニタリングの結果、改善措置(是正措置)をとった結果、どういうことが起きたからどういう措置をとりましたという記録。 検証ではどういうデータを得て、それに対してどう対処したとかいう記録も入ります。
それから、HACCPの前提となるような一般的な衛生管理についても、記録を残さなければなりません。 例えば、誰がどういう頻度で洗浄殺菌したのか、それをだれが点検したのか。 これらについても記録をとることになります。 全くその製品に関係ないものというのは、そもそもこのシステムの中には入ってきません。


4. HACCPシステムの前提条件

これまで見てきたように、起こりうる危害を先に分析して重要管理点を決め、科学的な根拠に基づいて徹底的に管理そして記録するHACCPは、食品の衛生管理にとって極めて有用なシステムです。
しかし、この有用なシステムも、基礎となる部分がしっかりと確立されていなければその効果はまったくと言っていいほど発揮されません。 GMP(Good Manufacturing Practice)などと呼ばれているものがそれで、要はHACCPシステムを有効に機能させるための前提条件として、危害分析や重要管理点の設定よりも前の段階で検討されるべき一般的な衛生管理事項です。
衛生的に食品を製造・加工するのに適した施設・設備構造となっているか、それらは正しく機能し、衛生的に保たれているか、従業員の衛生管理はできているか、そのためのトレーニングは適切かつ継続的に行われているかがそれにあたります。
なお、これらについてもSOP(標準作業手順書)を作成し、それに従って各々の項目をクリアしているという記録を残す事が必要です。
こうした非常に広範囲かつ基礎的な事柄を前提条件として固め、実際の原料受け入れから出荷・流通に至る流れの中で、ある工程に特有な決定的危害については、HACCPシステムで管理するという関係を構築する事が重要です。





一般的衛生管理プログラム
次の事項について実施担当者、作業内容、実施頻度、実施状況の確認及び記録の方法を記載した文書を作成し、従事者に遵守させるとともに、記録などにより実施状況を確認すること。
● 施設設備、機械器具の衛生管理● 施設設備、機械器具の保守点検● 従事者の衛生教育● そ族昆虫等の防除● 使用水の衛生管理● 排水及び廃棄物の衛生管理● 従事者の衛生管理● 食品等の衛生的な取扱い● 製品の回収方法● 製品等の試験検査に用いる機械器具の保守点検

<日経BP社 HACCP研究会編より>